序言 1
1.序 言
分子科学とは, 豊かな自然において多様な物質循環,エネルギー変換を司っている「分子」についての知識を深め, 卓越した機能をもつ分子系を創成することを目指す学問です。分子科学研究所は,そのような分子科学の研究の中核 拠点として実験的研究および理論的研究を行うとともに,広く研究者の共同利用に供することを目的として1975年 に設立された大学共同利用機関であり今年創立40周年を迎えます。国際的な中核共同研究センターとして,国内外 の分子科学研究を先導すると同時に,生命科学・天文科学などをふくむ,分子が関与する広汎な関連分野と協同して, 科学の新たな研究領域を創出することも目標としており,現在,理論・計算分子科学,光分子科学,物質分子科学, 生命・錯体分子科学の4つの研究領域,さらに協奏分子システム研究センター(2013年4月から発足)や極端紫外 光研究施設を始めとする7つの研究施設・センター,などを擁し,分子の構造と反応と機能についての先鋭的な基礎 研究を進め分子の新たな可能性を探っています。
このリポートには,2014年における各研究グループと,所としての活動状況が述べてあります。分子研では(1)
「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPC I)の構築」,(2)「ナノテクノロジープラットフォー ム」,(3)理研との共同による「エクストリームフォトニクス研究」,(4)「最先端の光の創成を目指したネットワー ク研究拠点プログラム」等の特別プロジェクトが進行中です。
また,国際的事業として特にアジア関係の2つのプログラム,すなわち(1)アジア研究教育拠点事業(アジアコア; 日本学術振興会)と(2)21世紀東アジア青少年大交流計画(J E N E S Y S Program;日本国際協力センター),を遂行 してきました。前者は,アジア諸国の研究教育拠点機関をつなぎ,物質・光・理論分子科学のフロンティア分野にお ける研究教育拠点の構築とともに次世代の中核を担う若手研究者の養成を目的とする事業であり,2011年度から
「I M S アジアコア」として実施しています。後者は,東アジアの学生,若い研究者の招聘,教育,研究の実施,また 現地との交流などを行ってきました。この J E NE S Y S Program のポスト Program として,現在分子研独自の E X OD A S S プログラムを実施し,新たな展開を図っています。
2014年10月に大島教授,また2015年3月末に村橋教授が東京工業大学に転出しました。これらの2名の教授は 分子科学研究所の研究の根幹を担ってこられ,特に大島教授は広報担当また機器センター長として分子研の運営に関 わってきました。改めて両氏の貢献に感謝したいと思います。2014年度始めには5名の新任の P I が入所しました。 飯野氏が東京大学から岡崎統合バイオサイエンスセンターの教授として,また,解良氏が千葉大学から光分子科学研 究領域の教授に就任し,さらに,古賀,田中,椴山3氏がそれぞれ,協奏分子システム研究センター,UV S OR ,生命・ 錯体分子科学研究領域の准教授として着任しました。
2014年度も,カリフォルニア大学バークレイ校の副学長(研究担当)の G raham F leming 教授と大阪大学の特任教 授の柳田敏雄教授に研究顧問としてプロジェクト研究の進め方,研究の将来構想などについて提言をしていただきま した。F l emi ng 教授は2014年10月下旬に3日間にわたり,新任 P I の4名及び理論研究者3名の研究について,ま た岡崎統合バイオサイエンスセンター,協奏分子システム研究センター(C IMoS )の現状,次期「メゾスコピック計測・ 解析センター」計画の内容などついてヒヤリングをおこない,また研究所間の新らたなプロジェックトの立ち上げ方 などに種々の提言を戴きました。また,外国人運営顧問であるオックスフォード大学副学長の Ian W almsley 教授には,
2 序言
2015年2月に3日間にわたり,分子研の運営状況,理論・計算分子科学 , 光分子科学研究領域,協奏分子システム 研究センター,生命・錯体分子科学研究領域などの主として新たな P I の研究内容,また極端紫外光研究施設,岡崎 統合バイオサイエンスセンターの現状について重点的にヒヤリングしていただきました。さらに生理学研究所の研究 室 を 訪 問 し, 分 子 科 学 と の 共 同 研 究 の 現 状 に つ い て 視 察 し て い た だ き ま し た。 さ ら に 11 月 中 旬 に は シ カ ゴ 大 学 の B erry 教授によって幾つかの研究グループのヒヤリングを行っていただきました。各グループの研究内容の評価とと もに,研究所の全体的運営に関する貴重な提言も戴きました。それらの研究評価,提言などは本リポートに掲載され ています。
分子科学研究所は次世代の核となる学問を生みだす時にまさに立っています。皆様のご支援とご協力をお願いいた します。
2015年4月 自然科学研究機構 分子科学研究所 所長 大峯 巖